もっとご飯と散歩の時間がほしい

俺は一家の大黒柱。シニアの枠にがっちりはいるチワワだ。
名前を“ちゃあ”という。飼い主であるかあちゃんは、チワワだからちゃあだとか、有名なギターリストと同じ名前なんだとか言っているけれど、本当のところは知らない。

かあちゃんは、喧嘩して家を飛び出していたときに、俺をスーパーで見つけた。
「シルバニアファミリー」を買おうかどうかと迷っていたのに、気がついたら俺を家族にしていた。
命を軽く考えてほしくないんだよね。

数カ月遅れで、同じような顔をした子がやってきた。
頭がまんまるで“みかん”というらしい。

そしてその年の冬、“ナナ”が生まれた。
そう、俺たちは家族なんだ。

散歩していると、ときどき声をかけられる。「かわいいですねぇ」という定番の言葉には、かあちゃんがニコニコ顔で「ありがとうございます。」とお礼を言う。何を勘違いしているのかなぁ、俺たちに言っているのわかっているのかな。
「そっくりですねぇ」という言葉には、「家族なんです」とかあちゃん。
「あら、一緒に暮らせていいわね」と言われることがある。それって当たり前じゃないのかな?

そういえば、かあちゃんのほかに、前はとーちゃんがいたんだった。
とーちゃんは、ナナが生まれたとき、毎日ナナの面倒をみて、体重を量っては手帳に書いていたらしい。
しばらくすると、とーちゃんを見なくなったな。
あれだな、「親犬問題」っていうやつだな。かあちゃんが、「だったら、私が全部面倒見るから」と啖呵を切って家を出たんだよ。
小型犬でも3匹となると、あまり住める家がないんだってな。
家を出てからもう一回引越したけれど、めぐりあわせで入れたとかあちゃんは言っていた。
俺たちの日ごろの行いがいいんだろうけどよ、ホント離れ離れにならなくてよかったよな。

今の家は、世話になっている“病院”っていうところにとっても近いんだ。
ただ、その病院ってとこは、正直あまり好きじゃない。
緑の台の上にのせられるんだよ。のっただけで、ナースの姉ちゃんたちは、いい子だねってほめるのさ。
かあちゃんは笑いながら、まな板の上のチワワだねーって写真撮んだぜ。まったくやめてくれよな。
今さらほめられてもなって思うのと、いい子っていう年齢でもないんだよな。

まぁ、男の俺が一番いい子なんだよ。
女の奴らは年が近いからなのか、妙に喧嘩っ早くてさ、俺がいつも止めてるんだよ。
本当だよ。「お前ら、何やってるんだ!」って、大声で止めに入るんだ。それなのによ、かあちゃんが、「あんたたちやめなさい。ほら、ちゃあも静かに」って言うんだよ。ひどいよな、俺、喧嘩を止めてるんだよ。

え?願いごと?叶えてくれるのかい?うれしいねぇ。
そうだな、もっとご飯と散歩の時間がほしいな。
中性脂肪というのが上がったとか、この間、かあちゃんが先生から言われていたんだよ。
かあちゃんのことだと思ったら、俺たちなんだって。嫌になるよなぁ。